外国人労働者の子弟教育
2022-12-17


 ちょっと以前に、外国人労働者の子供たちの教育に関係する仕事をしている方と話をしたことがあります。

 外国人労働者は、昔は中国それから中南米の日系人だったのがアジア全体から来るようになった、コロナのために一時減ったが、このごろまた増え始めた、ということでした。 具体的にどこの国からかと問うと、中国からが減って、今はベトナム、ネパール、ミャンマーが多いといいます。

 そういった国から日本にやってきた外国人労働者は子供を連れてくる場合も多く、そういう子供たちの教育が彼の仕事でした。 この子供たちの難しさは、まず一番は日本語が分からないことです。 日本の学校に入学するのですが、授業が分からず、ずっと泣いている子が少なくないといいます。 また友達もできないので、クラスでは孤立するしかないそうです。

 言葉が分からなくても、日本に来たのだから日本語を覚えようとしないのかと聞けば、そこが親との違いだと言います。 日本に働きに来る大人たちは、言葉が通じないことを知っているから覚悟をしており日本語を覚えようとします。 しかし子供たちはそれまで住んでいた故郷から離れ友人たちとも別れ、日本について何も知らないのに親の都合でいきなり日本に連れて来られ、日本の学校に送られることになります。 そこには自分の意思とか希望とか関係なしで、強制連行と言っていいくらいだそうです。 確かに子供にとっては「強制連行」でしょうねえ。

 もう一つの難しさは、国によって子供たちの教育程度が違うことです。 ある国では教育の義務というものがなく、実際に学校に行ったことのない子供がいます。 こういう国から来た子供は日本語が分からないだけでなく、算数なんかの知識もなく、学年はかなり上なのに幼稚園か1年生のレベルから教えねばなりません。

 また時には、国では極めて成績優秀でテストでいつも百点を取っていた子供も日本に来ると言葉が分かりませんから授業についていけず、テストは0点ばかりになり勉強の意欲をなくす場合もあるといいます。

 親は日本でできるだけお金儲けをしようと長時間で休日も働きますから、子供の面倒を見ないことが多いです。 学校からの連絡・通知の紙を見ても意味が理解できずそのままにしておくしかないし、子供が学校で困っていることにさほど関心がないようです。 たとえ関心があっても、どうすればいいのか分からず、放置するしかないと考えているのかも知れません。

 すべての外国人子弟がこうではないのですが、学校が面白くなくて苦痛となって行かなくなり、悪の道から誘いがあると簡単にそっちに歩むようになる場合が少なくないといいます。

 外国人子弟教育の関係者は、近在の大学の留学生に手伝いに来てもらって、言葉の通じるお兄ちゃん・お姉ちゃんがいるということで、何とか教育が続いているということでした。

 しかし今の日本の教育体制では外国人子弟教育に予算が回らず、またこういった子供たちを教えることのできる知識と能力のある教員があまりにも少ないと嘆いていましたねえ。 確かに日本人の子供相手の教育ならベテランでも、日本語が分からず、学力もバラバラの子供たちを教えるなんて、難しいようです。

 日本は少子高齢化のために、これからも外国人、特にアジアの開発途上国からの労働者が増えていきます。 それに伴い外国人子弟の教育も大いに必要になるのですが、それに対応する教育体制が非常に貧弱だと思われます。

 最後に外国人子弟教育関係者から話を聞いて、自分なりの感想を持ちます。 日本ではこれまで在日朝鮮人子弟の教育について長年にわたって様々な取り組みがなされてきましたが、その経験が今の外国人子弟教育に役に立っていないということです。 つまりこれまでの在日朝鮮人教育は、日本語を知っていてテレビなどで日本文化に馴染んでいる子供たちを相手にする特殊なものであったのであり、普遍性がなかったと言えるでしょう。


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