毎日のコラム「余録」の間違い―尹東柱
2020-09-15


 2020年9月13日付け毎日新聞の第一面下段にあるコラム「余録」は、韓国で国民的詩人とされる尹東柱に触れています。  [URL]

尹は第二次大戦中、留学先の日本で治安維持法違反容疑で逮捕された。当時禁じられていた朝鮮語での詩作が独立運動に当たるとされた。

 この中で「当時禁じられていた朝鮮語での詩作が独立運動に当たるとされた」が間違いです。 フェイクと言ってもいいです。

 当時の朝鮮は日本の植民地下にありましたから、公用語は宗主国の言葉である日本語です。 従って公的会議や役所間の連絡、裁判、学校などでは日本語となり、朝鮮語を使うことはありません。 裁判で日本語を解さない人が出廷しますと、通訳を雇うことになります。

 しかし一旦こういった公的空間から離れると、朝鮮語を使うことは自由でした。  朝鮮人たちは家族間、親戚間、友人間、近所間では朝鮮語で会話しました。 また当時、朝鮮内の電報はハングルで送ることが可能でした。

 朝鮮総督府の機関紙である「毎日新報」は、ハングルが使われた唯一の新聞として1945年の解放まで続きます。 また総督府は戦争中、朝鮮人に戦争を理解させ、動員するために様々なキャンペーンをしますが、これもハングルです。

 つまり毎日新聞にあるように「当時禁じられていた朝鮮語」というのは、あり得ないのです。

 従って朝鮮語の詩作が禁じられたこともありません。 韓国の詩人として有名な徐廷柱は尹東柱が獄中にあった1944年12月9日にハングルの詩を堂々と新聞に発表しています。 一方、尹東柱の詩は未発表でした。 公表されたハングル詩は容認されていながら未公表のハングル詩が禁じられたなんて、あり得ないことです。

 「朝鮮語での詩作が独立運動に当たるとされた」ことも、あり得ません。 尹東柱は友人間で朝鮮独立の夢を語ったことが「独立運動に当たる」とされたのであって、詩は関係ありません。 尹の詩には民族独立を感じさせるものは皆無と言っていいです。 岩波文庫に『尹東柱詩集』がありますが、そのどれも「独立」を表現するものはありません。 無理やり「独立」に結びつける人がいますが、詩はそのまま素直に読めばいいのに、と思います。

【拙稿参照】

尹東柱記事の間違い(産経新聞)   [URL]

尹東柱記事の間違い(毎日新聞)   [URL]

尹東柱記事の間違い(聯合ニュース) [URL]

水野・文『在日朝鮮人』(11)―尹東柱  [URL]

尹東柱は中国朝鮮族か韓国人か   [URL]

尹東柱のハングル詩作は容認されていた [URL]

『言葉のなかの日韓関係』(2)   [URL]

『言葉のなかの日韓関係』(3)   [URL]

『言葉のなかの日韓関係』(4)   [URL]

尹東柱の創氏改名記事への疑問   [URL]

尹東柱の創氏改名―ウィキペディアの間違い [URL]

尹東柱の言葉は「韓国語」か「朝鮮語」か [URL]


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