韓国の夫婦別姓制度
2020-02-17


 毎日新聞2020年2月15日付けの『経済観測』で、中央大教授・宮本太郎さんの「孤立社会の夫婦別姓論」と題するコラムがありました。 このなかで韓国の夫婦別姓が次のように少し触れられています。 

[URL]

制度としての合理性はともかく、「夫婦同姓はこの国の伝統だ」というのも必ず出てくる論点だ。 だが、夫婦同姓は1898(明治31)年の民法で欧州からいわば「輸入」された制度で、伝統とは言い難いことも広く指摘されている。 逆に血縁主義の強い中国や韓国は結婚しても血縁由来の名字を変えない夫婦別姓だ。 日本の場合、戸籍制度を開始する際に全国民に名字をもたせようとしても庶民はあまり関心を示さず、明治政府は苦労したらしい。

 この人に限りませんが現在の日本の選択的夫婦別姓議論のなかで、韓国の夫婦別姓を注釈抜きでそのまま紹介して、夫婦別姓には何の問題もないと論じる人が多いのですが、果たして如何なものかと思います。

 まずは朝鮮人の夫婦別姓という古くからの伝統は、男尊女卑すなわち女性差別の産物であることをしっかりと認識しなければなりません。

 朝鮮の女性は結婚しても、当初は夫の一族の一員として認められません。 男子を生んで初めてその母親として存在が認められるのです。 女性が結婚して相手方男性の両親にあいさつに行ったら、男子が生まれるまで子供を産み続けろと言われたというエピソードは、よく聞く話でした。 生まれる子供たちは父親の姓を受け継ぎ、男系一族の一員となります。 そして姓の違う女性は男子の母親として、その一族での存在感を示すことができるのです。

 次にこの伝統的夫婦別姓制度がどのような問題を引き起こすのか、です。 例えば夫婦が離婚した場合、子供はどうなるのか? 子供は父系の姓を受け継ぐことから分かりますように、いつまでも父親と縁が切られることはなく、父親の親権が維持されます。

 ですから母親が離婚して子供を引き取っても、その子供は父親の戸籍から離脱できず、従って父親はいつでも親権を行使できることになります。 子連れの女性はいつまでも前夫との縁が切れない子供を抱えますので、別の男性との再婚は不可能ではありませんが、難しくなります。

 分かりやすく例えて言いますと、金(女)さんと李(男)さんが結婚してできた子供は李(子)ちゃんです。 金(女)さんが離婚してこの子供を引き取ると、「金」と「李」の二つの姓を持つ母子家庭となります。 そして次に金(女)さんが朴(男)さんと再婚したら、今度はこの家族は、「朴」「金」「李」の三人三様の姓となります。 さらにこの家族に子供が生まれると、その子の姓は朴(子)ちゃんです。 とすると兄弟で姓が違うことになります。 また前夫の李さんは自分の子である李ちゃんに関しては口出しできる権利があり、李ちゃんを勝手に連れ出しても誘拐罪にはなりません。

 こういうことは近年までの韓国では考えられないことでしたから、女性は再婚しないで母子家庭を続けるか、あるいは子供を養子に(多くは海外に)出して独り身になって再婚するものでした。 近頃では子供を実母に預けて再婚という場合が増えているというニュースがありましたね。 孫を預からざるを得なかった祖母の悲惨な家庭状況が報道されていました。 (下記、拙稿参照)

 以上とは逆に、父親が子供を引き取る場合を考えてみます。 子供は父親の戸籍に入ったままですから、姓も父親と同じです。 しかし女性は離婚によって夫の戸籍から一人だけ離脱しますから、夫だけでなく子供とも縁が切れることになります。 女性は独り身となって再婚はしやすくなるのですが、どうなのでしょうかねえ。

 今の日本では夫婦別姓議論が盛んですが、その時に韓国の別姓制度を持ち出すのは慎重にしてほしいものです。

【拙稿参照】

韓国で、おばあさんと赤ちゃんの痛ましい死 [URL]


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