由来の不明な韓国の半跏思惟像
2016-07-07


 今、東京国立博物館で奈良中宮寺の半跏思惟像と韓国の国宝78号の半跏思惟像が並んで展示され、話題になっています。 この日曜日で見納めですが。

  韓国にはこの国宝78号以外に83号の思惟像があり、こちらの方は京都広隆寺の思惟像とよく似ていることで有名です。

 ところでこの有名な韓国の思惟像について、一体どこのお寺に祀られていたものか、といった基本的な情報が全くないことに気付かれたでしょうか。 これは日韓併合後に、骨董屋から入手されたもので、その骨董屋がどこでどのように手に入れたのか、よく分からないためです。

 韓国では李朝時代に仏教が弾圧され、僧は賤民階級に落とされます。 従ってその時まで大切に祀れていた仏像は、大部分が行方不明になります。 かなりの仏像が日本に流出したり、あるいは破壊から守ろうとしたのか地中に埋められたりしました。

 従って日本ではあり得ない話ですが、韓国では完形の仏像が「出土品」として紹介されるものがあります。 今回の展示にはありませんが、もう一つの国宝83号は「出土品」とされています。

 今回の78号半跏思惟像も、韓国のどこの地方の、どこのお寺にあったものなのかすら不明です。 少なくとも李朝時代の数百年間は、他の仏像と同様に全く祀られず、大切にされていなかったと言っていいものです。

 今回の展示を見に行かれる方は、韓国の仏像受難史に思いを馳せてくれたらいいなあと思います。

 韓国の半跏思惟像については、これまで拙論で三回ほど取り上げたことがあります。 合わせてご閲覧下さい。

金銅弥勒菩薩半跏思惟像   [URL]

金銅弥勒菩薩半跏思惟像(2)   [URL]

金銅弥勒菩薩半跏思惟像(3)   [URL]


コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット