「三韓」の用例(9)―「三韓」で一つの言葉
2015-07-14


 先に「三韓」は‘三つの韓’という意味ではなく、その二文字で一つの言葉(領域名)ではないかと論じました。 ところで古地名で「三」の付くものは意外と多いものです。 例えば日本では、旧国名の「三河」があります。 三河には目立った川は矢作川と豊川があるくらいで、他は小さな川ばかりです。 だから三河は‘三つの河’という意味ではありません。 結局三河の言葉の由来は不明とされています。 国名だけでなく旧郡名でも「三島」「三重」「三根」「三野」「三木」など「三」の付くものは多数ありますが、そのほとんどが地名の由来について‘三つ’という意味はなさそうです。

 このことは朝鮮でも同じです。 李朝時代の地理書である『拓里誌』(邦訳は平凡社東洋文庫『拓里誌―近世朝鮮の地理書』2006年6月)で、「三」の付く郡名を拾ってみました。

 平安道―「三和」「三登」

 咸鏡道―「三水」

 江原道―「三陟」

 慶尚道―「三嘉」

 このうち三陟は、韓国の三陟市のHPによれば地名の由来は不明とのことです。 少なくとも「‘三つ’の‘陟’」という意味はなさそうです 他の郡でも、管見では由来は不明です。

 日本でも朝鮮でも、「三」と付く古地名には‘三つ’と意味となるものはないようです。 従ってこれらは二つの語が合成されたのではなく、二文字で一つの語だと解釈すればいいのではないかと思います。

 時代はかなり違いますが、「三韓」も「‘三つ’の‘韓’」という二語の合成語ではなく、二文字の一語であって一つのまとまった領域名であると考えればどうだろうか、と思います。

 これは、「百済」に‘百の’という意味がないのと同様だと言えば、分かり易いかも知れません

「三韓」の用例(1)―中国古代   [URL]

「三韓」の用例(2)―朝鮮古代   [URL]

「三韓」の用例(3)―日本古代   [URL]

「三韓」の用例(4)―朝鮮古代金石文 [URL]

「三韓」の用例(5)―中国古代金石文  [URL]

「三韓」の用例(6)―沖縄金石文   [URL]

「三韓」の用例(7)―朝鮮王朝実録  [URL]

「三韓」の用例(8)―近代日本  [URL]


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