徐正禹氏(企業に脅威を感じさせ‥企業からの資金提供は、多額であればあるほど効果)
2008-07-21


 [URL] で論じました第6章の部分です。一部の引用では誤解と批判される可能性がありますので、「6.1」の全文を引用します。 [URL]

>第6章 具体的課題

6.1 運動体の財政確保―企業からの資金提供について―

 民族差別撤廃運動を展開し、闘争に勝利するには、当然のことながらそのための財源が必要である。組織構成員の会費で賄う場合もあるが、会費で事務所経費、人件費を賄うことはできない。たしかに民族差別撤廃運動に賛同する人々は少なくないが、個人で支出できる金額には限界がある。

 民族差別撤廃運動は、在日コリアンの人権擁護が目的であるが、それは民族差別があるからであり、民族差別を生起する主体は往々にして企業、行政である。民族差別を生起する企業、行政に責任がある以上、民族差別撤廃運動に対して企業、行政がそのペナルティとして相応の資金を提供することは当然として考えるべきである。

 しかし、日本社会ではいまだ、人権団体が差別した企業、行政から資金適用を受け取ることには、極めて強い抵抗がある。これは、水平社の時代の解決主義、即ち差別した側から解決金を得る手法が、後に濫用されたことと、今日のエセ同和行為によるものである。しかし、それは資金提供自体の批判というよりも、資金提供の方法論に問題があったというべきである。要は資金提供の理由と経緯、金額と使途の明細が全面的に公開されることによって完全な透明性が確保され、かつ説明責任が果たされることである。逆に公開性、透明性、説明責任が果たされないのであれば、資金的提供は受けるべきではない。

 たしかに、企業、行政から資金提供を受けることによって、当該企業、行政に対するその後の闘いに支障をきたすこと、あるいは資金提供が目的化することも可能性として否定できない。しかし、利潤追求を目的とする企業にとって、差別糾弾の結果、運動体に資金を提供せざるを得なくなることには少なからぬ抵抗があるため、逆にそれを教訓として企業にとって民族差別は、経営にマイナスとの印象を与えることとなる。そこにペナルティの効用性がある。

 企業にとって、民族差別は矛盾した概念である。差別は企業の社会責任の観点から許されない行為であるとの認識はある。しかし、いまだ民族差別が存在する以上、社員採用においては、日本人を優先する。社内の人事管理上同じ日本人同士のほうが、より管理しやすいと考える結果である。また、取引相手や顧客が必ずしも民族差別意識をもっていないとは限らない。そのため、リスクを軽減する上でも、在日コリアンより日本人を優先するのである。少数者の人権より多数者の顧客を大事にすることが、経営上有利であると考える企業がいまだ大半である。

 だからこそ闘いが必要なのであり、啓発で企業のこのような姿勢が一夜にして変化するなどありえない。闘いは相手が、民族差別の再発を自ら戒めるほどに脅威を感じさせなければ意味がないのである。その意味において、差別企業からの資金提供は、多額であればあるほど効果がある。


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