在日朝鮮人の生活史が地のまま保たれている ‥‥苦難の故郷を見棄ててきた者のうしろめたさから在日民族団体の常任活動家となって、いっぱしの組織活動家になっていったのもまた、在日朝鮮人運動の拠点地域だった猪飼野でありました (『金時鐘コレクション4』366頁)とあるように、思い入れ深い場所でした。 彼はこのような「猪飼野」の地名が消えることが、「日本の保守政権はたゆみなく、戦前の軍国日本の痕跡を消し去ることに注力してきました」(同上、367頁)と同列に考えておられますから、「猪飼野」の地名変更に反対する意味で『猪飼野詩集』を書かれたと思われます。
しかし実際にその猪飼野に住んでいる人は
『イカイノ』と聞くだけで地所が、家屋が、高騰一方の時節に廉く買いたたかれるといい、ひいては縁談まで支障をきたしている(同上、366頁)
のでした。 地名が消えたのはその住人には理由があったようですが、金さんはそこの住人でなくなったから反対した”と言えるようです。
『猪飼野詩集』は、金さんが同胞のいない吹田で生活していた時に同胞集住地区である猪飼野に通いながら過去のノスタルジーに浸りつつ書いたものと言えるのではないかと思われます。 つまり『猪飼野詩集』はもはや住民でなくなった金時鐘が書いた詩集”ということです。 研究者が『猪飼野詩集』を論じる際に、吹田に言及しないのが不思議ですね。 (続く)
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