いわゆる「在日韓国・朝鮮人」は法的に言うと、「出入国管理に関する特例法(平成3年5月10日 法律第71号)」の第1条にある「平和条約国籍離脱者及び平和条約国籍離脱者の子孫」です。 分かりやすく言うと、「朝鮮半島に生を受けながらも日本の植民地政策に起因して渡日し、そのまま残留した人々、およびその子孫」で、在留資格は「特別永住」となります。
この在日韓国・朝鮮人は将来に消滅するだろうという予想を早くから立てたのが、法務省で長年に渡って出入国管理行政に携わってきた坂中英徳さんです。
私は講演(1998年1月の民族差別と闘う連絡協議会主催の集会での講演)で「日本人との結婚の増加」と「人口減少」の問題について特に力を入れて論じ、これから在日韓国・朝鮮人の日本国籍化が急ピッチで進むことを強調した。 その上で、21世紀前半中の「在日韓国朝鮮人自然消滅論」を唱えた。 (坂中英徳『在日韓国・朝鮮人政策論の展開』日本加除出版 1999年2月 22頁)
近年、私は「在日韓国・朝鮮人自然消滅論」を唱えている。 韓国籍・朝鮮籍の特別永住者の人口は、帰化と人口の自然減で減少の一途をたどり、在日韓国・朝鮮人は50年以内に自然消滅する可能性が高いと見ている。
もっとも50年以内とはいっても、人口減が今と同じ年間1万人強のペースで緩やかに進行する可能性は低く、むしろ年々の人口減により在日韓国・朝鮮人社会が急速に縮小してゆき、それがまた同胞同士の結婚の減少と帰化の増加をもたらし、人口減少をいちだんと加速させるコースをたどって、比較的早い時期に自然消滅の日を迎える可能性が高い。 (以上 坂中英徳『入管戦記』講談社 2005年3月 200頁)
彼は1999年4月2日付『毎日新聞』のインタビュー記事でも、次のように言っています。
在日は自然消滅へ ‥‥ (在日韓国・朝鮮人の)人口の自然減が5年ぐらい前(1994年)から始まったことです。 ‥‥ 帰化した人もこの20年間で12万人ぐらいになります。 加えて、日本人と結婚する人が増え、生まれた子供は日本国籍となって、人口が減ってきました。 ‥‥ このままいくと、在日の韓国籍、朝鮮籍の人は毎年1万人ずつ減っていく。 あと数十年以内にほとんどゼロになってしまう。 実際はゼロにならないでしょうが、消滅に近い状態になる。 誇張して言っているわけではなく、20年経てば20万人、50年経てば50万人は確実に減るわけです。 (同上 140〜142頁より再引)
このように出入国管理を担当する法務省官僚であった坂中さんは、1998年頃から「在日韓国・朝鮮人自然消滅論」を唱えました。 しかも消滅が「21世紀前半中」「数十年以内」という時期まで言及したのです。 在日を担当する国家権力者が「在日は消滅する」と発言したのですから、民族団体などから大きな反発の声が上がっただろうと思われるかも知れませんが、実はそれがなかったのでした。
幸い、在日韓国・朝鮮人社会から批判の声は上がらず、発言内容が問題にされることもなく、事なきを得た。 あとで人づてに聞いたところでは、在日社会では『毎日』の記事に対する反発の声が一部にあったが、「あの坂中のことだからと」ということで不問に付してくれたということだ。 ある有力な在日朝鮮人は「武士の情けだ」と私に言った。 (同上 145頁)
実のところ、特別永住の在日はこのままでは将来に消滅するだろうということは、在日自身が薄々ながら気付いていました。 ノンフィクション・ライターの野村進さんが1996年に著書で次のように書いています。
帰化者が増えるだけ在日人口は減り続け、「在日はトキとおなじだ」という声も当の在日から聞いた。 特別天然記念物のトキのように、やがて「絶滅」していくというものである。 (野村進『コリアン世界の旅』講談社 1996年12月 27頁)
セコメントをする