毎日新聞の7月31日付けの読者投稿欄「みんなの広場」に、次のような投稿がありました。誤解のないように全文を引用します。 なお名前と住所は伏せています。[URL]
植民地支配の歴史に向き合う=無職・荒木〇〇子・78 (宮崎県〇〇市)
私は78年前に朝鮮で生まれ戦後、2歳で引き揚げてきたが、出生地が朝鮮であるということを50年あまり、人前で言えなかった。私自身の差別心からである。
次のようなことを聞いた。20代の父の職場での役職は、50代の朝鮮人よりもずっと上で、部下としてこきつかっていたこと。給料も日本人は6割加給されていたこと。お手伝いさんを3人も雇っていたこと。私は子供心に、朝鮮人は劣っているという感性を刷り込まれていた。
50代の頃、植民地支配の歴史を学んだ。日本が朝鮮の人々の土地と仕事を奪い、日本語を強制して言葉を奪い、創氏改名で名前まで奪った事実を知った。国家としての日本も個々の日本人も歴史の事実に向き合い、どうすれば近隣諸国との未来を再構築できるのか、模索しなければならない。
人の人生ですから、どのような気持ちを持ってきたのかは様々になりますので、この人はこのような考え方・感性を持ってこられたのかと思うだけです。 ただ歴史事実として指摘しておかねばならない所があります。 「日本が朝鮮の人々の土地と仕事を奪い、日本語を強制して言葉を奪い、創氏改名で名前まで奪った事実」という部分です。
「土地を奪い」は併合直後から約10年間に施行された土地調査事業のことと思われます。 この事業を「朝鮮人の土地を奪う」ものとする主張は、今も根強いですね。 実はこれは土地(主に農地)の権利を調査し確定するものであって、従って私有財産制の確立という意味がありました。 ですから、それまでの李朝時代では土地の所有権が不確実だったのが、この事業を機に「この田畑は自分が耕作する権利がある」ことが公的に証明されることになったのです。 これが「日本人が土地を奪った」というように、話がすり替わりました。 かつての朝鮮史の概説では、日本人が騙して土地を奪ったという架空の物語を出していましたねえ。
「仕事を奪い」とは何のことか分かりません。 朝鮮で「奪われた仕事」とは何なのか? もともと朝鮮は農業国で、商工業は未発達でした。 貨幣は李朝末期(19世紀後半)にようやく普及する経済状態でした。 果たして日本は朝鮮人からどんな仕事を「奪った」のか、疑問になります。 日本は鉄道建設、鉱山開発等々で朝鮮人を多数雇用していたのですがねえ。 この投稿者自身が、家では「お手伝いさんを3人も雇っていた」と書いており、仕事を奪うどころか与えていました。
「日本語を強制して言葉を奪い」も、かつての朝鮮史の概説によく載っていました。 日本の植民地ですから公用語が日本語になったのは確かですが、朝鮮人が日常生活で朝鮮語を使うことは自由でした。 例えば学校では日本語で授業が行われるのですが、一旦校門を出ると友人、家族、近所とのコミュニケ―ションは朝鮮語だったのです。 それ以前に、当時の朝鮮人には教育の義務を課せられませんでしたから、学校に行く・行かないは自由と言ってよかったのでした。 こんな状況で、なぜ「言葉を奪う」となるのか、首をひねります。
「創氏改名で名前まで奪った」も間違いですね。 創氏は家族の名前である「氏」を新たに付け加えるものであって、「名前を奪う」ものではありません。 日本名に変えても金とか李とかの先祖伝来の民族名は朝鮮戸籍の本貫欄に移されており、その民族名を公的に証明することができました。 また創氏改名で日本名に変えたのは80%で、残りの20%の朝鮮人は民族名を維持しました。 これで何故「名前まで奪った」となるのか、不思議ですねえ。
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