強制連行論への批判―『反日種族主義』の著者
2019-09-24


 いま話題の『反日種族主義』は韓国内でかなりの議論が出ているようです。 この著者の一人であるイ・ウヨン氏は、戦時労務動員(強制連行・強制労働)に関して「当時、朝鮮人青年たちにとって日本は一つの『ロマン』だった」と書きました。 これに対してチョン・ヘギョン氏が厳しい批判をハンギョレ新聞紙上で行ないました。 そして今度はイ氏がこれに対する反批判を、同じくハンギョレ新聞で発表しました。      [URL]

 このイ氏の論稿は、私に大いに参考となるものでした。

日本は最高の先進国の一つであり賃金は朝鮮の数倍だったが、朝鮮では仕事を探すことさえ難しかった。 壮大な未来を夢見る朝鮮の若者にとって日本が『ロマン』ではなかったのなら、それは何だったのか?

被動員労務者の4割が職場到着の前後に逃げた。‥‥ 朝鮮の若者にとって日本はロマンだったが、朝鮮人の5割以上が配置された炭鉱と鉱山は、忌避の対象だった。日本には行きたいが、(炭)鉱員として働くことは嫌だった。逃亡者は朝鮮に戻るのではなく、作業環境がより良い所に就職した。「ロマン」と「逃亡」は共存した。

逃亡者中の相当数は、むしろ労務動員を利用した。 無料で安全かつ合法的に日本に渡った後、逃げたのである。 逃走を念頭に置いて労務動員に応じた者は60%だったという調査もある。 上には上がいたのである。

当時の賃金は成果給であり、上記の運炭夫の10時間労働による基本給には、民族差別の痕跡を見つけることはできない。 日本人の月収が高い理由は、超過勤務が朝鮮人よりはるかに多かったからである。 勤労意識の差もあるが、朝鮮人と違い日本人には扶養しなければならない家族がいたからである。

筆者は朝鮮人の日常について、「酒色と博打で収入を使い果たす場合もあるほど、彼らの生活は自由だった」と主張した。 それついてチョン・ヘギョン研究委員は、「逃走者を捉えてリンチを加え命まで奪った」と言う。 潜在的被殺者が4割との計算である。 ところで朝鮮人がリンチによって死亡したという根拠は何か? 苦労して調達した労働者を、損害を顧みず殺害したのだろうか? 戦時下の日本が無法と野蛮の社会だったという根拠は何か?

 私はかつて強制連行・強制労働の本をよく読んでいましたが、いつも疑問に思っていたことがあります。

 @ 無理やり連れて来られ、過酷な労働を強いられたために逃亡したとなっているのに、逃亡した後も故郷に帰らずに日本国内に留まり、働き続けていること。 そしてそこでも過酷な労働を強いられたとなっていること。 なぜ故郷に帰ろうとしなかったのか。 「過酷な労働」を承知の上で、日本で働きたかったのではないか。 

 A 当時は渡航証明制度があって、朝鮮人は日本に行くのに警察の渡航証明が必要だった。 ところが渡航証明なしに日本に渡った朝鮮人は数多く、見つかれば強制送還された。 不正渡航が見つかった朝鮮人は、強制連行の真っ最中である1942年で4,800人であった。 つまり一方では本人の意思を無視した強制連行が行われたと言いながら、他方では取締りを覚悟で渡航した朝鮮人が多かったということになる。 これは矛盾という言うべきではないか。

 B 終戦直後に政府は、戦災で家が焼かれた人と焼かれなかった人の差を是正するために、家が焼け残った人に財産税を課した。 朝鮮人でこの税金を課せられた人が約1,000人。 焼けてしまった朝鮮人もいたから、終戦までにそれなりの財産を有した朝鮮人はかなりの数になる。 つまり日本で無一文から働き始めて、お金を貯め、家を持つまでになった朝鮮人が多かったという事実がある。 これは、朝鮮人は搾取収奪されてきたという歴史とは矛盾するのではないか。

 今度のハンギョレ新聞に載ったイ・ウヨン氏の論稿は以上の疑問に答えてくれており、成程そういうことだったのかと膝を打ちました。 やはり専門研究者ですねえ。 説得力があります。


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