私の国籍研究史(8)
2017-08-27


 二重国籍には「積極的な二重国籍者」・「消極的な二重国籍者」・「潜在的な二重国籍者」の三種があるとしました。 このうちの「積極的な二重国籍者」は複数のパスポートを有したり、両国の参政権を行使したりしますから、非常に分かり易いです。 多くの人が二重国籍というと、これをイメージするようです。

 「消極的な二重国籍者」は二重国籍を証明することができる状態なのに、二重国籍の権利を行使せずに単一国籍者として行動しています。 これで日本では何の支障もなく生活できますので、自分が二重国籍であることを忘れてしまう場合も往々にしてあります。

 一番厄介なのは「潜在的な二重国籍者」です。 本人も周囲も気付かないで日本単一国籍者として生活している場合や、両国の国籍法上は二重国籍でありながらもう一つの国に国民登録(戸籍に該当)をしていない場合など、様々な場合が想定できます。いずれにしても二重国籍であることの証明が難しくなります。逆に二重国籍ではないという証明も難しいものです。

 例えばある人が、「私は二重国籍ではない。この通り、私の戸籍を見てくれ」となった場合、その戸籍を見て二重国籍でないと直ぐには断定できません。 父母欄には日本人の名前が記載され、出生地が日本であっても、二重国籍でないとは言えないからです。 なぜなら父母が二重国籍の可能性があるからです。

 1985年の国籍法改正以降、日本では二重国籍者が急増します。 大抵は日本の国籍法に従って22歳までに国籍選択をして単一日本国籍者になりますが、そんなことをせずに二重国籍を維持している日本人も少なくありません。 この人たちが今や子供を産む時代になっています。 つまり二重国籍者の子供が生まれる時代に既になっているのです。 この子供は日本国籍を有するのは間違いないですが、もう一つの外国籍を有するかどうかはその国の国籍法に拠るもので、日本の法律は関係ありません。

 そしてその外国の国民登録(戸籍登載)がされていないとなると、二重国籍でありながら二重国籍が証明されない状態となります。 戸籍の父母欄に日本人名が書かれて日本で出生していても二重国籍という場合があり、しかもその証明が出来ないという事例がこれから増えていくことでしょう。

 またいわゆるシングルマザーの場合、戸籍の母親欄には日本人の名前があるので日本国籍は間違いありませんが、外国人の父親が認知していることがあります。 しかもその認知届を日本ではなく、自分の本国だけに提出・受理されていたら、父親欄は空白ですが本人は二重国籍となる場合が出てきます。 しかし日本には認知届が出されていませんので、日本では認知が戸籍に記載されず、戸籍をいくら見ても二重国籍か否か全く分からない状態となります。

 何が言いたいかといえば、戸籍を見ると日本国籍であることは判明するが、二重国籍か否かは判明しないことが多々あるということです。 戸籍をどう見ても日本単一国籍と思えるのに実は二重国籍という例がこれから増えていくことでしょう。 そしてまた両国の法律に従えば二重国籍となるがそれを証明できないという例も、あるいは逆に二重国籍ではないという証明が出来ないという例も増えていくことでしょう。

 二重国籍の疑いがあるから戸籍を公開しろという主張がありましたが、戸籍を見ても二重国籍の疑いが晴れるか分からないものだし、疑い出せばキリがないものです。 あなたの戸籍を見ても二重国籍の疑いがまだ残るから父母・祖父母の戸籍も公開しなさいとなるでしょう。 そしてそのうちの一人でもが外国と関係した(外国で出生したとか、外国人と身分関係になっていたとか、帰化しているとか等)痕跡があれば、そら見ろ!二重国籍の疑いがあるじゃないか!二重国籍でない理由は本人が出せ! となることでしょう。

 戸籍公開は意味のないことです。

私の国籍研究史(1)  [URL]

私の国籍研究史(2)  [URL]


続きを読む


コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット