毎日新聞の5月8日付けで、澤田克己記者の「なぜ嫌韓は高齢者に多いのだろうか」と題する記事が出ました。
澤田記者は世論調査から、高齢者層に韓国を嫌う傾向が強いことを指摘しています。
日本政府が毎年行っている「外交に関する世論調査」というものがあります。米国や中国、韓国について「親しみを感じるか」などと聞く調査です。昨年末に発表された調査結果では、韓国に親しみを感じるという回答は39.4%でした。2012年の李明博大統領(当時)による島根県・竹島上陸を契機とした日韓関係悪化を受けて14年に31.5%まで落ち込んだものが、少しずつ回復しているという状況です。ただ6割を超えていた09〜11年とは比べるべくもありません。
調査結果の詳細なデータを見ていると気がつくことがあります。「韓国に親しみを感じる」という回答が18〜29歳では57.4%なのに、70歳以上では28.1%なのです。まさにダブルスコア。他の年代も見ると、30代51%、40代42.3%、50代42.7%、60代31.3%でした。どこで線を引くべきかは難しいところですが、高年齢層の方が韓国に対して厳しいというのは一目瞭然でしょう。
「嫌韓は高齢者に多い」というのは専門家たちが話題にしていたことなのですが、それを裏付けるような数字です。ヘイトスピーチ対策に取り組んでいる神原元・弁護士は「ヘイトスピーチは若者が憂さばらしでやっているというのは勘違いだ。むしろ、ある程度の社会的地位を持つ50代以上というケースが多い」と指摘しています。
「高年齢層の方が韓国に対して厳しい」ということです。 私の体験からもう少し詳しく言うと、これは男性に特に多く、女性は少ないです。 「親しみを感じない」嫌韓高齢者の多くは男性であり、逆に「韓国に親しみを感じる」高齢者の大半は女性であると見て間違いないです。 上記の世論調査に、男女別の数字を出してほしかったです。 私の予想では、男女で顕著な違いが出てくると思います。
ところで韓国語教室で熱心に勉強する方は大体が女性であり、白髪の方も結構おられます。 韓国語能力試験やハングル検定試験で最上級合格する女性は一杯います。 一方、高齢の男性で上級以上にまで行っているような熟達者は、現役時代に韓国に赴任して友人をつくったとか、韓国に具体的に接した経験のある方の場合が多いですね。 韓国語を忘れないようにと今なお学習意欲旺盛ですが、数は非常に少ないです。
嫌韓派のほとんどは、これまで韓国との体験がなくて韓国語を知らず、そして学ぼうともせず、ただひたすらインターネットや嫌韓本・雑誌などの情報を読んで、韓国に対する反発と嫌悪を書き連ねますねえ。 これは高齢者も若者も関係なく存在する傾向性です。
次に澤田記者は、高齢者に嫌韓が多い理由を次のように論じます。
では、どうしてなのか。これは、なかなか難しいところです。まだまだ検証が必要なのですが、1980年代末から韓国にかかわってきた私の感覚では、「昔の韓国」のイメージが作用しているのではないかと感じています。80年代までの日本で韓国に持たれていたイメージは「軍事政権」というネガティブなものでした。
それに対して90年代後半以降に成人した世代には、K-POPに代表されるような発展した国という明るいイメージしかありません。90年代末に慶応大の小此木政夫教授から「最近の学生はソウル五輪以降のイメージしか持っていない。我々の時代とは全く感覚が違う」と聞いたことがあるのですが、まさにそうした違いでしょう。
そして「昔の韓国」は、経済的にも、政治的にも、日本とは比べものにならない小さく、弱い存在でした。それなのに、バブル崩壊後に日本がもたついている間に追いついてきて生意気なことを言うようになった。そうした意識が嫌韓につながっているのではないか。そう考えるのが自然なように思えます。67年生まれの私と同世代だという神原弁護士も、同じような感覚を持っているそうです。
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