中村一成『ルポ思想としての朝鮮籍』(2)
2017-06-13


 日本の外国人登録で韓国籍ではなく、「朝鮮籍」を維持すると、不利な面がかなり出てきます。 中村さんは次のように解説しています。

朝鮮籍を生きる者はいくつもの困難に晒される。一つは移動である。実在しない「くに」の名が国籍欄に表記されている事態は世界では理解され難い。日本への再入国許可証(これ自体、「元国民」への処遇として不当の極みである)を手にしての海外渡航は、しばしば海外の入管で足止めされる。慮武鉉政権時代はほぼ認められた朝鮮籍者の韓国入国も、李明博政権以降は不承認が増え、年によって申請者の6割以上が入国を拒まれている。 ‥‥‥そして、日本では差別や不当な処遇を受ける。かつての外国人参政権法案でも朝鮮籍者は排除されていたし、2012年に導入された「みなし再入国制度」(1年以内の海外渡航なら再入国許可が不要になる)からも「有効な旅券」の所持を条件にする形で除外された。DPRK(北朝鮮のこと)の「核」や「ミサイル」が喧伝されるたびに、朝鮮籍者は「制裁」という不当弾圧の的にされる。 ‥‥‥DPRKに渡航すれば原則として再入国不許可とされる者の範囲は拡大しているし、再入国の許可期間も短縮された。出国する朝鮮籍者に再入国拒否をちらつかせ、「北朝鮮に行かない」との誓約を迫っていたのも最近のこと。 (まえがき G頁)

 外国人登録で「朝鮮籍」の方は、これだけの多くの不利があります。しかし彼らは、手続きをするだけで簡単に「韓国籍」にすることができます。 またこの切り替えをすれば、韓国のパスポートも取得できます。そうなれば故郷の親戚に会ったり、先祖の墓参りをすることも簡単です。けれども朝鮮籍はこんなことすら困難なのです。

 従って「朝鮮籍」の方は不利であることを承知の上で、「韓国籍」に切り替えることなく「朝鮮籍」を維持していることになります。それなりの確固とした「思想」があるのでしょう。

 ところで中村さんは、朝鮮籍の不利さについて「不当」という言葉を何度も使っています。 ここに彼のイデオロギー的立場が現れていますね。


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