在日朝鮮人を、植民地支配に由来する韓国・朝鮮籍保持者(おおむね韓国・朝鮮籍の特別永住者で、いわゆるオールドカマー)に限定すると‥‥オールドカマーの減少の第一の原因は、日本国籍の取得、いわゆる「帰化」の増大である。 この間の世代交代や、帰化要件・手続きの効率化(*)などもあいまって韓国・朝鮮籍の帰化者数が著しく増加し、2013年現在累積の帰化者数は35万人近くに達している。 (*)かつての帰化には、複雑な手続きと二年から三年の期間が必要であったといわれるが、90年代の以降の特別在留資格をもつ在日韓国人の帰化手続きの事例は、ほぼ一年余りで帰化手続きが完了している(浅川晃広『在日外国人と帰化制度』) (213頁)
この本では帰化については詳しく書かれていません。 だから帰化要件や手続きが具体的にどうなっているのか、「効率化」されたと言いながら何が「効率化」されたというのかが記されておらず、浅川さんの言を紹介しているだけです。
ところでこの本では、この浅川晃広さんの『在日外国人と帰化制度』のどこかの部分を引用しているような体裁にしていますが、実際にはこのようなところは見当たりません。 さらにこの紹介文では「特別在留資格」となっていますが、「特別永住」と「特別在留」は違うものです。 浅川さんの本には「特別永住」のみが記されており、「特別在留」には全く言及していません。 従って、これはこの紹介文を書いた水野直樹・文京洙の間違いだと考えた方がいいようです。
浅川さんは帰化者へのアンケート調査により、帰化申請受付から許可までの期間について次のようにまとめています。(118頁)
半年以内 半年〜1年 1年〜2年 2年〜3年 3年以上 無回答 計
韓国 48 129 46 3 1 1 228
この数字は植民地に由来する特別永住だけでなく、近年のニューカマーも含んだ数字です。特別永住だけの数字はありません。 それはともかく、帰化書類が十分に整っていたら、許可までの期間は一年もかかっていないことを示しています。 ここでも水野・文の紹介文にある「在日韓国人の帰化手続きの事例は、ほぼ一年余りで帰化手続きが完了している」とあるのが、かなり不正確であることが分かります。 おそらく浅川さんのこの本を実際に読んでいないものと推測できます。
ところで帰化手続きで、かつては時間がかかったが近年は時間がかからないということについて、在日韓国・朝鮮人をよく知っていれば分かることです。 在日のお年寄りの場合、本国の戸籍に記載されている名前や生年月日等が日本の外国人登録簿にあるそれと違っていることが多く、それを解決しなければ帰化書類が調えられないという事情があり、時間がかかりました。 しかし若い世代になると、本国における正確な戸籍記載が進んでいるので帰化書類を調えやすく、また日本で生まれ育っているものですから日本国内の書類も簡単に入手できますから帰化手続きがスムーズに行くのです。
在日が帰化しようとしたら、昔は民団に行って高い手数料を払って取り寄せてもらっていたのですが、今は領事館に行くと自分や両親の戸籍を簡単に直ぐに発行してもらえます。 ただそれはハングルなので、それの日本語訳が必要になることぐらいがネックになります。 しかしこれも、近頃の韓流ブームで韓国語を読める人が日本人でも飛躍的に増えましたので、難しくないでしょう。 在日の世代交代に伴い、本国における身分証明関係書類(戸籍など)が調えやすくなったことが、帰化の期間短縮に繋がっているのです。
セコメントをする