来日外国人犯罪は多いか少ないか
2007-03-08


 移住労働者と連帯する全国ネットワーク『外国籍住民との共生に向けて』(現代人文社・大学図書 2006年6月)に次のような記述があります。

「“来日外国人”刑法犯の検挙人員を過去の約10年で比較すると、10年で2割あまり増加している。しかしその間に外国人の新規入国者数は8割以上増加しており、犯罪率としてはむしろ減少していると言える。‥‥各年の“来日外国人”刑法犯検挙人員は、日本全体の2%前後(2004年2.3%)を占めるにすぎず、1994年と同じレベルである。これをもって“来日外国人”を“治安悪化”の元凶のように言うのは偏見そのものであり、事実に反する。  また“来日外国人犯罪の凶悪化”というが、2004年の来日外国人の凶悪犯(殺人・強盗・放火・強姦)検挙人員は421人で、日本全体(7519人)の5.6%を占めるにすぎない。」(163〜164頁)

 これが正しいのかどうかです。『犯罪白書』等の資料から調べてみました。

・まず過去10年だけではなく過去20年を調べてみますと、来日外国人の一般刑法犯は、84年が1,301人、94年が6,989人、04年が8,898人です。  過去10年で27%増ですが、20年前から比べると6.83倍です。

・次に日本の刑法犯のうち“来日外国人”の占める割合ですが、84年0.29%、94年2.27%、04年2.29%。  過去10年では変わりませんが、過去20年では7.9倍となります。

・新規入国者数は分かりませんが、外国人登録者数(在日含む)で見ますと、84年が840,885人、94年が1,354,011人、04年が1,973,747人です。  過去10年で45%増ですが、過去20年では2.35倍です。

・日本人口のうち外国人登録者(在日含む)の割合は、84年0.7%、94年1.08%、04年1.55%。  過去10年で44%増で、20年では2.2倍です。

・来日外国人の刑法犯検挙人員は、日本全体の2%前後(2004年2.3%)とされていますが、20年前の0.3%に比べれば約7倍です。  ただしここで言う「来日外国人」は登録者以外の短期滞在者も含みます。

・凶悪犯(殺人・強盗・強姦等)における来日外国人の割合は2004年で5.6%とされていますが、一般刑法犯の2.3%に比べると、2倍以上です。

 つまり過去10年を調べると、外国人登録数は1.45倍、外国人犯罪の数は1.0〜1.3倍ですので、確かに犯罪率としては減少しています。  ところが過去20年を調べると、外国人登録数は2.2〜2.3倍、それに比べ外国人犯罪の数は6.8〜7.9倍です。  そして日本全体のうち外国人犯罪者の占める割合は20年前に比べて7倍です。しかも凶悪犯罪が多いのです。  犯罪率は激増としか言いようがありません。  外国人犯罪は20年前から比べると激増しており、ここ10年の間はその高い数字を維持したまま現在に至り凶悪化しているのです。

 以上より「外国人犯罪は増えていない」という主張は、20年前から生起した犯罪の激増、そしてここ10年間はそれが高止まりしたまま推移してきたという事実を隠蔽するものと言わざるを得ません。

 上記ネットワークの「過去の約10年で比較すると‥‥“来日外国人”を“治安悪化”の元凶のように言うのは偏見そのものであり、事実に反する」と論ずるこの本は、過去20年まで遡るとその事実関係に間違いがあることが明白です。

 何でもそうですが、まずは事実関係を正確に把握することを出発点としなければなりません。「偏見」という問題はその次に考えるべきものです。

(ご注意)  なお本稿での「外国人」とは在日ではなく、来日外国人です。  在日は過去20年の数字を調べると、人口では2割減ですが、犯罪者数では5割減です。従って在日の状況は格段に良くなっています。

(追記)  来日外国人の数を調べることは、意外と難しいものです。3ヶ月以上の長期滞在者なら外国人登録するのでそれは分かりますが、観光などの短期滞在やあるいは密入国、オーバーステイなども多数います。ある時点での外国人数は、なかなか分かるものではありません。  外国人の犯罪率を正確に数字で出すことは、非常に困難です。


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